2012年10月15日月曜日

10月15日

秋晴れ、の東京。
空がまた少し高く、また少し蒼くなったような。
秋です。金木犀が香ります。

香りが先にやってきて、その香りに気づいてあたりを見回して、 
Oh,ここか、と木を見つける……。
秋の金木犀と春浅い日の沈丁花は、香りでまず
「わたしはここにいます」と自己主張をするようだ。
花そのものにはきらびやかな印象はなく、
それがまたすてきなのだが。

今日は川崎で講演。遅い夕方に帰京(といっても近かったが)する車の窓からも、
不思議な懐かしさを連れてくる金木犀の香りが。
嗚呼、秋なのだとしみじみと。
金木犀夕暮れに似合う香りかもしれない。

たくさんの本を贈られる。
「書評によろしく」という率直な言葉が添えられた本も多い。
できるだけ送り手のご意向に添いたいと思うが、すべてを書評などでご紹介することはできず……。

そこでいつも悩む。

この数日間に届いた本の一冊に(送り主は作家の渡辺一枝さん)、絵本があった。
遠藤綾乙(あやを)さんとおっしゃる16歳の女の子が絵と文章を描かれた『あしたの猫』(オフィスエム 発行)。

表紙は、葉を生い茂らせる一本の樹の幹で、こちらを真っ直ぐに見ている一匹の猫。
鼻筋と頬からおなかにかけては白。足先も白いソックスをはいているようで、頭から背中、しっぽは淡い茶色のやわらかな表情の猫だ。

……一匹の猫がいました。

絵本はそんな言葉ではじまる。

その日。猫は生まれて初めての体験をする。大地が激しく揺れる体験。
遠くで大きな音が鳴り響く。
外に出ると、だーれもいない。だーれも。
雨が降ると、足下の植物は枯れていく……。そうして、猫も……。

16歳の瑞々しく真っ直ぐな感受性と論理性が描いた、「わたしたちのいま」。
『あしたの猫』というタイトルも象徴的だ。