2011年7月19日火曜日

7月19日

夜、ビリー・ホリディの歌声を聴く。
『奇妙な果実』。
南部の大きな樹の枝にぶらさがる、黒い果実。
風雨にさらされ、強い日射しに焼かれ、そうしてやがては地に還る黒い果実。
あれは、白人たちにリンチされ、枝にぶら下げられたアフリカ系アメリカ人の姿……。
ビリー・ホリデイは同胞をそんな風に歌う。

このブログに何度も書いているように、基地がそうであるように、
原発もまた地域差別でもあるのだ。
それもこのうえなく破壊的な。
このうえなく残酷にして非情な。

福島の町。小さな商店街を抜けると、畑が続く。
真夏の午後。
縁側で、パンツ一枚の子どもが、西瓜にかぶりついていた。
いま、自分がすべきことのすべてが、ここにある、とでもいうかのように。
じいちゃんもステテコ一枚で西瓜にかぶりついていた。
丈の高い向日葵が庭には何本か咲き、
縁側の敷石の上のまわりには、松葉ボタンが色とりどりの小さな花をつけていた。
こんなありふれた光景さえ、すでに消えた町や村がある。

あの子は、祖父は、いま、どこに。